2010年2月7日日曜日

ホルモン療法の副作用4 子宮体癌(子宮内膜癌)

これはタモキシフェンの有名な副作用なので、ご存知の方も多いと思います。
このような副作用の報告があると、一部の人たちは、“発がん性のある危険な薬剤だ!”と騒ぎ立てたがります。実際、タモキシフェンが子宮体癌の発生リスクを3倍増加させるという報告が出されたとき、そのような主張をする人たちがいました。

しかし、どんな薬剤にも副作用はあります。たしかに子宮体癌の発生率を上げるのは事実ですが、そもそも子宮体癌自体、発生頻度が高い癌ではないので、3倍になっても発生頻度としては投与した患者さんの1%未満と言われています。一方で、タモキシフェンは対側の新たな乳癌の発生を有意に減少させることがわかっています。その効果は子宮体癌発生数の増加より大きいので、新たな癌の発生を考えた場合に、発癌効果より発癌抑制効果のほうが上回ることになります。もちろん、そもそも手術した乳癌の再発予防目的で投与しているわけですし、その有益性(タモキシフェンの5年投与は再発を42%減少させる)はメタアナリシスで証明されています。ですから、“タモキシフェンは、発がん性があるから危険な薬なので、飲まない方が良い”という主張は正しくありません。

定期的な子宮体癌の検査(超音波検査や生検など)をするかどうかは、各施設の判断です。2000年のNIHのカンファレンスでは、タモキシフェン服用患者における子宮体癌の発生頻度は、全員にスクリーニングを受けさせるほど高くないため、無症状の人がこれらの検査を受けることの有益性を否定しています。

ちなみに私は年1回の子宮がん検診時に頸がんと体がんの細胞診を受けるように勧めています。理由は、多少痛みはありますがさほどの負担ではないこと、私の患者さんの中にもタモキシフェン投与後に子宮体がんを発生した方が、覚えているだけでも4人くらいいらっしゃるからです。

8 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

先生のブログをいつも拝見しています。患者さんの私にとって、非常に役に立ちます。
私は2007年8月に右胸筋温存乳房切除術を施行しました。当時45歳、閉経前でした。
術後病理診断は浸潤性乳管がん、硬がん、Φ9cm、リンパ節転移(+)計26/38、ER・PgR(+)、HER2(ー)、gradeⅡ、stageⅢAでした。
術後治療は
①抗がん剤投与半年、AC4回→Taxol10回(副作用で12回にいたらなかった) 
②放射線照射 30回(胸壁・鎖骨上)
③2008年4月からノルバデックスを服用し始めました。

現症状は抗がん剤で閉経のままで、LH8.0、FSH14.5、E2<10 (2010年11月のデータ)
CEA  6~9の間で変動しています。

2010年7月の婦人科の検査で子宮内膜厚さが23、クラスⅠで、2011年1月の検査で子宮内膜厚さが37、クラスⅠだしたが、子宮内膜癌になるリスクが高いでしょうか。でも、主治医は薬を変更することが無く、ノルバデックスを続けて処方箋されました。 
ノルバデックスを飲み続けて大丈夫ですか?本人としては中止したいです。

先生の忙しいところで、こんなコメントを書くのがとても失礼だと思いますが、本人は恐怖のなかで、耐えられない毎日をすごしていますから、赦してお願いします。

         

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
まず、匿名さんの病理結果を拝見すると、やはり再発予防の治療は最優先に考えるべきだと思います。
現在の子宮内膜の状態から今後子宮内膜癌が発生するかどうかはわかりません。少なくとも今は慌てなくても良いと思います。ただ、どうしてもご心配でしたらアロマターゼ阻害剤への変更の可能性について主治医の先生とご相談してみてはいかがですか?FSHはまだ十分に高くなってはいませんので今後月経が戻る可能性は否定できませんが、無治療で経過を見るよりは良いと思います。もし再度月経が来たらLH-RH agonist(ゾラデックスやリュープリン)+タモキシフェン(ノルバデックス)の再開を検討する、というのが良いのではないかと私は考えます。
それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

早々にアドバイスをして頂き、誠にありがとうございます。

実は主治医の先生は子宮内膜がなんミリとはいえ、異型細胞があったら、薬の変更をするといいました。

再発しやすいタイプという自覚があるから、ノルバデックスを続けて飲むしかないです。

ただ、内膜の厚みが今のペースで進行したら、子宮が詰まってしまうのではないかと心配して、1,2ヶ月の休薬をするつもりですが、生理が戻るかどうかわかりませんので、あきらめます。

次の五月の通院で、再度主治医先生と相談して、薬の変更を試みます。

多忙中で丁寧に治療方法のアドバイスをくださり心から感謝して至します。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
そうですね。よくご相談の上、決めるのが良いと思います。お大事に!

匿名 さんのコメント...

いつもブログを拝見しています。わかりやすい表現で、参考になります。
2011年7月に50歳で乳房温存術、放射線治療をしました。
病理診断は浸潤性乳管がん、Φ1cm、リンパ節転移(-)ER・PgR(+)、HER2(ー)、gradeⅠ、stageⅠでした。
現在タスオミンを服用しています。
術後自然閉経で特に問題なく服薬治療を続けてきました。
2012年8月より不正出血があり、子宮体ガン検査を数回していますが、内膜の肥厚はあるものの組織的には問題なく、「閉経期出血」と言われました。
その後10月大量不正出血で「子宮頸管ポリープ」を外来で摘出しました。
また12月に再度出血がありDrいわく「前回の残骸」からの出血ということで前回同様1cmという比較的大きなポリープを摘出しました。
病理検査は良性です。
タスオミンで子宮内膜ポリープになるという記述を見ました。薬の副作用と考えて良いのでしょうか。
悪性ではないのでタスオミンを続けたいと考えていますが、他の薬に変えた方が良いのでしょうか。
アドバイスお願いします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
まず子宮頸管ポリープについてですが、たしかにタモキシフェンの副作用の一つに挙げられてはいます。ただ内服してまだ1年ちょっとですので、そのくらいの期間で発生し、症状を呈するものなのかはわかりません。
薬剤の変更についてはなんとも言えません。もし確実に閉経しているのであればアロマターゼ阻害剤に変更するのは良いと思いますが、まだ卵巣が機能しているようでしたら無効ですので、その場合はタモキシフェンを継続するか無治療にするかという選択を考えなければなりません。タモキシフェン継続のmeritとdemeritを秤にかけて、主治医の先生、婦人科の先生とよくご相談の上で決めるしかないと思います。申し訳ありませんが、私にはそれ以上のアドバイスはできません。
それではお大事に。

匿名 さんのコメント...

お忙しい中、早速お返事いただきありがとうございます。
今回3人の婦人科医にかかり、ポリープの再発については、「半年」とか「5年」とか「まず無い」とご意見が分かれています。
とにかく2ヶ月ということにはただただ首を捻るだけでした。
婦人科医からタスオミンの影響かもというお話は一切ありませんでした。子宮体がんだけ調べれば良いとお考えのようです。乳がん治療をよくご存知な婦人科医が少ないのでしょうか。
乳腺外科医と婦人科医の間で自己選択自己決定をしていく。乳がんも主治医曰く「悩まないための標準治療」とはいえ、選択を求められることは多く、この1年自分で納得いくまで調べ決断していくという生活に少々疲れているところです。
しかし治療は始まったばかり。まだまだ先は長いので、先生のブログで勉強しながら、前向きな選択をしたいと思っています。ありがとうございました。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
子宮頸管ポリープは珍しくない疾患ですし、タモキシフェンとの因果関係もはっきりしているのか不明ですので(副作用の中には因果関係がはっきりしないものも多く含まれます)、タモキシフェンの副作用と認識している婦人科医はあまりいないのではないかと思います。私自身も今回のご指摘で調べてみて初めて知ったくらいですから。
いろいろご心配になるお気持ちもわかりますが、この疾患はタモキシフェンの副作用以外でもよくみられる病気だということは理解しておく必要があると思いますよ。
それでは。