2010年2月24日水曜日

乳房温存術後の短期間放射線照射法の無作為比較試験結果

乳房温存術後には、局所再発予防目的で温存乳房に放射線治療を行なうことがガイドラインで推奨されています。

現在主に行なわれている照射法は、50Gy(グレイ)という量を25回に分ける方法です。週4回照射すると約6週間かかります。日本ではあまり問題になってはいませんが、北米では治療回数の多さや費用を理由に放射線治療を受けない患者さんも出てきているようです(最大30%!)。

そこでカナダ・マクマスター大学Juravinskiがんセンターでは、少分割・短期間照射の有用性についての無作為化試験を実施し、その成績が報告されました。

追跡期間:中央値12年
対象・方法:1993年4月~1996年9月の間に、浸潤性乳がんで乳房温存術を受け、切除断端(-)、腋窩リンパ節(-)で放射線治療を受けた1,234例。対照群(標準線量50.0 Gyを25分割で35日間かけて照射、612例)と少分割照射群(42.5 Gyを16分割で22日間かけて照射、622例)に無作為化し追跡。

結果:追跡10年時点の局所再発リスクは、対照群6.7%だったのに対して、少分割照射群は6.2%と効果に差は認めず。美容的アウトカムは、良好(good)もしくは優良(excellent)が対照群では71.3%、少分割照射群では69.8%と有意差なし。


つまり、「少分割照射療法は標準照射療法と比べて、10年時点でも劣らない」という結論だったということです。しかし、北米での成績が日本でも当てはまるかどうかは今のところ不明です。もう少し多施設の臨床試験もしくは国内の臨床試験の結果が出なければ安易に照射法を変更することは勧められませんが、もしこの結果が正しいのであれば、患者さんにとっては身体的、経済的な恩恵は大きいと思います。

7 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

こんにちは。
私は11/4に乳管内乳頭腫のブログで
手術後乳首が痛いけど大丈夫かという質問をさせていただいた者です。
hidechin先生の返信から勝手に判断してこのままで大丈夫、と思い様子を見たところ、
痛みはほとんどなくなりました。
あの時はありがとうございました。

昨日手術の検査結果が出て0期の乳がんだった、と診断されました。
(術後すぐの説明では乳管内乳頭腫でしょう、と言われていたんですが・・)
放射線治療を勧められました。
私は派遣社員のため、今後の仕事の不安があるので、すぐにやるとは言えませんでした。
でも、やらなくてはいけないと思っています。そこでお聞きしたいのですが、放射線治療をすると髪の毛が抜けてしまうのでしょうか?入院中かつらをつけて退院された方がいました。その時同室の方が「乳がんの治療は髪が抜けることが多い」と仰っていたので、
気になっています。

またホルモン療法が効くか検査中で、今月中には結果が出るそうなのですが、効くと分かれば放射線治療後にホルモン療法をすればベスト、と言われました。
非浸潤でもそこまでやらなくてはいけないものなのでしょうか??

くだらない質問かもしれませんが、よろしくお願いいたします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
乳房への放射線治療で髪の毛が抜けることはありません(頭部に照射するわけではありませんので)。乳がん治療で髪の毛が抜けるのは抗がん剤を使用する場合です。

おそらく乳頭腫を疑って切除したのでしたら乳管腺葉区域切除術を行なったのだと思います。この切除法だと十分な断端距離が取れませんし、完全切除できているかどうかの判断も難しい場合があります。追加切除をしないのであればやはりきちんと放射線治療を受けた方が良いと思います。

ホルモン療法についても局所再発、対側乳がんの予防効果がありますので乳房温存術後(ホルモンレセプター陽性の場合)にはお勧めすることが多いです。
どうしても内服したくなければ併用しない場合もありますが、最低でも放射線治療は局所再発予防のために受けておいたほうがよいと思います。
それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

今日はお休みなので返信はないと
思っていましたが、早速返信を頂きましてありがとうございます。

まずは放射線治療では髪の毛が抜けないとのことで安心しました。
会社の人たちには迷惑をかけてしまいますが、命に関わることなので治療を優先させてもらいます。

私のようなケースで放射線治療を行っても再発する確率というのはどれくらいなのでしょうか?
またもし再発した場合、今度は全摘になってしまうのでしょうか?

匿名 さんのコメント...

今日はお休みなので返信はないと
思っていましたが、早速返信を頂きましてありがとうございます。

まずは放射線治療では髪の毛が抜けないとのことで安心しました。
会社の人たちには迷惑をかけてしまいますが、命に関わることなので治療を優先させてもらいます。

私のようなケースで放射線治療を行っても再発する確率というのはどれくらいなのでしょうか?
またもし再発した場合、今度は全摘になってしまうのでしょうか?

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
一般的に乳房温存術に放射線治療を併用した場合の乳房内再発率は10年で10%と言われています。これは切除の方法(十分に距離を置いて切除するか、整容性を重視してぎりぎりで切除するか)や断端が陽性か陰性かによっても異なります。私の病院では切除断端を陰性にすることを重視して切除していますので乳房内再発率は一般的なデータの半分以下です。

もし万が一再発してしまった場合は原則的には全摘が必要になります。なぜなら2回目の放射線治療はできないからです。放射線治療を併用しない温存術にチャレンジするケースもあるかと思いますが、その場合の再再発率はさらに高くなります。ですから推奨はできません。
取り急ぎ以上です。おわかりいただけましたでしょうか?

匿名 さんのコメント...

ありがとうございました。
よく分かりました。
主治医に聞くのが一番なのでしょうが、
疑問は診察が終わった後に沸いてくるので、
直接聞くことが出来ませんでした。
ですので、こういう場があるのはとても
有難いと思っています。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
お役に立てて良かったです。
それではお大事に!