2010年8月28日土曜日

第7回 With you Hokkaido報告


今日、札幌医大の講堂で第7回With you Hokkaidoが行なわれました。

以前にもタイムスケジュールを書きましたが、実際の内容と印象を報告します。

①基調講演1 「乳がん患者とコミュニケーション」保坂隆先生(東海大学医学部精神医学教授、聖路加国際病院ブレストセンター)

・がん患者さんの1/3はうつ病、適応障害などの精神疾患を併発する。がんの部位によっても有病率は違うが、乳がんは40%前後。なお、一般人のうつ病有病率は5%で、何らかの病気を患うと10%になり、入院を要する疾患にかかると20%に増加する。
・抑うつの症状には、①抑うつ気分(ゆううつ、気分が落ち込む、楽しくない、悲しい)、②精神運動性抑制(物覚えの低下、考えがまとまらない→「仮性痴呆症」、何もしたくない、おっくう)、③身体症状(食欲不振、体重減少、頭痛、肩こり、不眠など→「仮面うつ病」)などがある。
・抑うつの病前性格には、①メランコリー親和性性格(協調性が高い、ルールに従い、ルールに乗ることを好む→「いい人」)と②執着気質(完全癖が強く最後までやり通す→「真面目な人」)の二つがある。①は変化に弱いため、喪失体験(家族の死、リストラなど)があるとうつ病を発症しやすい。②は心身の加重(過重労働、成果主義など)が加わるとうつになりやすい。
・主治医には「自分の患者はうつになって欲しくない、うつのはずがない」という思いがあることと、「乳がんになれば気分が落ち込むのは当然だ」という正常反応の拡大解釈があるため、うつを正確に診断することは難しい。
・妻と死別した夫は、妻が生きている夫より4年生命予後が短い(男女逆の場合は1.9年だけ…)、特に死別後1年以内に病気になったり急死する率が高いというデータもあり、がん患者家族のケアも重要。
・集団精神療法やグループワークががん患者の生存期間を延長するかどうかははっきりしていない。1970年代のデータは有効という結果だったが1990年代の再検証では有意差が出なかった。これは近年ではこれらの治療を受けない群でも患者会やネットなどで精神的なストレスの軽減ができていたからかもしれない。したがって精神療法などの介入は無効とは言えない。
・医師に好かれる患者(協調性があり、おとなしく、あまり質問しない)の予後は悪く、嫌われる患者(予約通り受診しない、うるさい)は長生きするという傾向がある?→断れるものは断る、嫌なものは嫌だと言うようにしよう!
・抑うつ症状の発生予防法…①リラクゼーション(腹式呼吸、自律訓練など)②イメージ療法(がん細胞を免疫細胞が食べるイメージを思い描きながら寝る、など)
・「患者学入門」…医師は患者とのコミュニケーション法について勉強し始めたばかりだから、患者自らも勉強するべき。①知る責任もある ②病気、治療内容を熟知する ③メモを取る ④十分な説明を必要とする場合は診療時間外に医師にアポを取る ⑤重要な話には家族や友人を同伴する ⑥即決しない(1週間くらいかけて頭を冷やす)

・盛りだくさんでしたが、とても楽しく有意義なお話でした。


②基調講演2 「美しきコミュニケーションスキル」堺なおこさん(フリーアナウンサー)

ピンクリボン in Sapporoのイベントでご一緒させていただいたりS放送局のFM放送に出演させていただいた縁のある堺さんが、人とコミュニケーションを取るための注意点や秘訣を参加型のトークで教えて下さいました。
初対面の印象は最初の6秒で決まってしまい、そこで悪印象を与えると、回復するのに2時間を要する。そして最初に与えた印象は3年間持続する、とか、挨拶などは「ラ」の音階で話すと印象が良い、コミュニケーションを取る場合の座る位置は、ななめが良い、など、すぐに実行できそうな内容を教えて下さいました。

③グループワーク

今回は「手術後の不安・治療」のグループに入りました。いつもは患者さんからの質問コーナーのような形になってしまうのですが、今回は患者さん同士が自発的に体験談などを語ってくれてスムーズに時間が経過しました。

④癒しのフラ ピンクリボンフラダンサーズ(写真)

ちょっと出遅れてしまいましたが、今回もやはりG先生はフラをノリノリで踊りまくっていました。私の患者さんにもフラのサークルに入っている方がいます。リハビリにはちょうど良い運動量なのかもしれません。

⑤基調講演3 「乳がんの方が利用できる社会保障制度、乳がん診療における医療費」高橋由美子さん(札幌医大看護部師長)

高額な医療費は患者さんの家計を圧迫します。今までも何度も相談されたことがありますし、相談できずに通院を中断してはじめて経済的困難を抱えていることを知ったケースもありました。今回のお話は、高額療養費制度、高額療養費貸付制度、高額療養費受領委任払制度、障害年金制度、介護保険サービスなど、詳細は割愛しますが、知らないと損をしてしまう制度をまとめてわかりやすく紹介して下さいました(詳細はネットで検索するか、病院の相談窓口へ)。

長くなってしまいましたが、今回もとても充実した内容で勉強になりました。ただ、リレーフォーライフ(室蘭)と重なっていたためか、今回は参加者が少なかったのが残念でした。来年はもっと早くから宣伝して多くの患者さんや医療従事者に参加してもらえるように頑張ります。

2 件のコメント:

itomaki さんのコメント...

結局仕事の休みが取れず今年も参加できず残念です。
来年こそはお休みとってお手伝いに!
ご指導よろしくお願いいたします<(_ _)>

hidechin さんのコメント...

>itomakiさん
参加できなかったんですね。とても良い内容だったので残念でしたね。来年は是非参加して下さい!